まず米、そして野菜

最初は離乳食の記録、途中からは読書の記録。

グラフィカル貨物の疾走。「はしれ! かもつたちのぎょうれつ」ドナルド・クリューズ著

JR武蔵野線で電車を待っているとき、目の前を貨物列車が通り過ぎた。見慣れた通勤電車とは明らかに違う、埃っぽい鈍色。延々と連なる車両。金属音を響かせて、たっぷり時間をかけて通り過ぎる威容に、コハシはノックダウンされた。「今のは貨物列車っていうんだよ」と伝えると、大人の言葉を繰り返すことができるようになったばかりのコハシは興奮気味に復唱した。「おむつれっしゃ!!」……そうか。おむつか。

この絵本で表現されているのは、あの時コハシの前を駆け抜けた「かもつたちのぎょうれつ」の疾走感だ。なんだかよくわからない、見慣れないかたちの箱が、何ページも使って描かれている。この絵本の「かもつたち」は、一両ずつ違う。とてもスタイリッシュな形と、美しい色を持っている。それぞれの車両の説明もある。「オレンジいろのタンク」、「じょうごみたいなきいろいくるま」。でも、簡素化されたフォルムの車両たちからは、中にどんな荷物がつまれているのか、どうしてこの形なのかは、見て取ることができない。カラフルでミステリアスな箱の連なりの先頭に、真っ黒い機関車がいる。重々しく煙を吐いている。

ぎょうれつのスピードが上がると、かもつたちは輪郭が溶け、色が混ざる。ここからはあっという間だ。塊になって風景を切り裂いたかと思うと、遠くへ消えてしまう。

なんかよくわかんないけど、長くて、早くて、すごくかっこいいもんを見た。そういう、あのJRの貨物列車を見たときと同じ気持ちを味わえる本だ。

はしれ!かもつたちのぎょうれつ (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

はしれ!かもつたちのぎょうれつ (評論社の児童図書館・絵本の部屋)