早すぎたんだ。「ごあいさつ」和田琴美 著、結城嘉徳 絵
私の絵本好きは母譲りだ。母は、嫁入り道具と一緒に「詩とメルヘン」のバックナンバーを嫁ぎ先へ持ち込んだような人だ。子供の私もご覧の通りの絵本好きに仕上がり、進学しようが就職しようが普通に絵本を読んで暮らした。とはいえ絵本は高価だし場所も取るので、近年はなかなか買えずにいたのだ。
そんな我々に、赤子という「絵本を手に入れる大義名分」ができた。やばい。私もやばいし母もやばい。母は神保町ブックフェスティバルを毎年楽しみにしているが、コハシが1歳になりたての頃に開催されたときは「まだコハシは読めないかもしれないけど、見つけちゃったから〜」とかなんとか言いながらどっさり絵本を買ってきた。1歳児に瞬殺されそうな、繊細なしかけ絵本も混じっている。やばい。隠せ隠せ。赤子の手の届かないところに置くんだ!
それらの「我々オトナがひゃっほいするのによさそうな絵本」の中で、これならコハシ(当時1歳)と一緒に楽しめそうだ、と読んでみたのがこの本だ。各ページはフリップになっていて、「おひさま にこにこ あさだよ!」という絵をめくると、「おはよう!」と挨拶するクマが出てくる、というしかけ。シンプルなので壊されにくいだろうと思った。
読み聞かせてみると、コハシは「あー われちゃった」→「ごめんなさい」のページを特に喜んだ。涙目のゾウを見て「あーあ」となぜか得意げに笑う。そのくせ、当時のコハシは、自分が謝らなければいけないときは頑として口を開かない人だった。タチが悪い。2年後のいまは、さっさと謝ってすっとぼけるので、更にタチが悪くなった。
この本は、ころんと小さなかわいいサイズで、子供の手にも収まりやすい。持ち運びもしやすく、お出かけのお供の1冊になった。
が、この持ちやすさがあだになった。
手に取れば、投げる。叩きつける。引きちぎる。少々の破れはテープで補修したが、両手で持ってもぐもぐ噛み、ふやかしてしまった歯型はどうにもならなかった。形を整えて干したら読むには支障がないくらいに復活したけれど、しばらくはフリップをめくるときにペリペリと音がした。
コハシにプレゼントするのは2歳になってからでもよかったかもしれない。