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まず米、そして野菜

最初は離乳食の記録、途中からは読書の記録。

ブルータスよお前もか。「おばけなんてないさ」「ねないこだれだ」瀬名恵子 著

コハシは今のところ、おばけのことは怖くない。コハシが怖がっているのは、一に鬼、二に暗闇だ。鬼は、節分のせいですっかり恐ろしいものになった。豆で退散させられると分かっていても怖いものは怖い。暗闇が怖くなったのは割と最近のことで、暗い部屋や、電気が付いていない玄関を怖がるようになった。トイレは自動で電気が付くので怖くない。

それらに比べ、おばけはユーモラスで取っつきやすい存在だと思っているふしがある。『おばけなんてないさ』の歌の影響もありそうだ。せなけいこさんの絵本には、槇みのりさんによる歌詞が5番までまるまる全部載っていて、あのおなじみの、猫目の真っ白なおばけたちが、歌詞にあわせて楽しそうに合唱したり踊ったりしている。バンジョーみたいな楽器を持ったおばけもいる。かわいい。最後のページには楽譜まで付いているので、頑張れば弾き語りもできる。私はあんまり頑張れないので、とにかくコハシと一緒に歌う。これを寝かしつけのときに持ってこられたら長期戦を覚悟しなければならない。歌っている間にコハシの目が冴えてしまうからだ。私にとっては恐ろしい本だ。

ねないこだれだ』のおばけは、『おばけなんてないさ』に出てくるおばけと同じ姿形をしている。「おばけの せかいへ とんでいけ」と言われても、想像するのは陽気にバンジョーをかき鳴らすおばけたちが歌い踊る世界だ。一向に怖くない。ふくろうもどらねこもコハシは好きだし。どろぼうのことはよく分かっていないし。

ちなみにコハシは「どろぼう」と言えずに「どぼろう」と言う。ちょっと前までは「ぼろどー」と言っていたので、正解に近づいたのかな。そうでもないか。

このところ、コハシは絵本を読み終わると毎回、「この子、なんでおばけになっちゃったの?」と言う。「おばけが『まだ寝てない子、みーつけた』って、連れて行っちゃったんじゃない?」と答えると、「早く寝ないとだめだよねえ」と、したり顔をする。まるで自分は早く寝ているような口ぶりだ。胸に手を当てて、おのれの振る舞いをよく思い返してほしい。

先日もコハシはいつもどおりに「なんでおばけになっちゃったの?」と聞いてきた。しかし、そのとき読み聞かせていたのはタカハシだった。いつもの問答を知らないタカハシは、「誰かが『まだ寝てないひとがいます。おばけさん、連れてっちゃってください』って電話でおばけを呼んだんじゃない? お父さんも呼んでみようか。もしもしー?」と電話を掛けるふりをしてみせた。

コハシは、思いがけない裏切りにあったかのように愕然として、タカハシを凝視したまま立ちすくんだ。腹心の部下ブルータスに刺されたユリウス・カエサルはこんな顔をしていたのかもしれないと思えるような、真に迫る表情だった。 

おばけなんてないさ (せなけいこのえ・ほ・ん)

おばけなんてないさ (せなけいこのえ・ほ・ん)

 

  

ねないこだれだ (いやだいやだの絵本)

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