まず米、そして野菜

最初は離乳食の記録、途中からは読書の記録。

手段の目的化。「いそがしいよる」さとうわきこ著

星がきれいな夜、ばばばあちゃんは家の中にいるのがもったいなくて、ゆりいすを外に持ちだしてお星様をみていました。やがて遠くの森からお月さんも出てくるのを見ると、いっそのこと外で寝てしまおうと考えました。そこでベッドと毛布と枕を、それからお茶の道具も、そしてテーブルやレンジ、しまいには家のものを全部持ちだしてしまいます。

いそがしいよる|福音館書店

きょうは星を見ながら寝ましょう! と野外泊を決意したばばばあちゃんは、あれが必要かしら、これも必要だわね、と思い付くまま次々と外に運び出す。とにかく楽しそうだ。

子供のころ、この本をめくりながら「私だったらなにを運び出すかな」とわくわくシミュレーションした。あれやこれや考えているときが一番楽しい。旅行の準備に熱中するあまり当日寝不足になっちゃうみたいなやつだ。うっかり目的を見失うアレだ。よくある話だ。

 

コハシだったら何を持ち出そうと思うのか気になって、読み聞かせたあとで聞いてみた。

 

コハシはなにやら深く考えて、まず、

「荷物を出しているとき、雨が降っちゃうといけないから、最初から、傘でバリアしたほうがいいよ」

 と言った。コハシの傘は、いままで持っていた45cmのものが身長に合わなくなったので、先日、一回り大きい50cmのものに買い換えたばかりだ。それを使いたいらしい。

 

「あと、テーブルは重たいから、ばばばあちゃんと、もう一人、いたほうがいいと思う」

と言う。保育園では、テーブルを動かすとき、いつも二人以上で運んでいるそうだ。一人だと大変だし、危ない、というわけだ。

 

それから、冷蔵庫を屋外へ持ち出したばばばあちゃんに対して、

「冷蔵庫は重たいから、運ぶなら、あと、100人、要る」

でもそんなに集めるのは大変だから、冷蔵庫は諦めるべきだ、と言った。なるほど。

 

最後にコハシは

ばばばあちゃんは、お星さまを見たかったのに、どうしてこうなっちゃったんだろうねえ」

と首をかしげた。冷静な指摘だな。

 

「じゃあさ、じゃあさ、コハシだったら、どうする?」

「透明の傘を、たーっくさん合体させて、バリアをつくって、寝る」

コハシの新しい傘は、周囲が見えるように2面が透明になっている。それをうまいこと使いたいらしい。

 

コハシは「こんな感じ」と、うちにある傘を何個か広げてバリアを試作し、その中に入り込んで、満足そうに笑った。そして、持ち込むアイテムを検討しはじめた。計画を聞く限り、星空を楽しむという当初の目的はすっかり忘れている。

そうそう。ついついそうなっちゃうんだよね。で、それが楽しいんだよねえ。