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まず米、そして野菜

最初は離乳食の記録、途中からは読書の記録。

子供から鉄道マニアまで。 「やこうれっしゃ」西村繁男 著

コハシが触れた初めての字のない絵本だ。字がないからといって易しい内容ではない。福音館の絵本は裏表紙に対象年齢が書いてあるが、この本は「読んであげるなら4歳から、自分で読むなら小学低学年から」と、なかなかの難易度だ。

文があれば、物語は一つの筋にフォーカスされる。この本は文章の制約がないぶん、それぞれの人物が同時進行でばらばらに動いている。上野発・金沢行きの夜行列車に乗り合わせた人々の、出発から到着までの群像劇だ。焦点の当て方を変えれば、たくさんの物語を読み取ることができる。

初版は1980年だから、描かれているのは70年代の様子だろうか。ごった返す上野の中央改札を俯瞰してホームに入ると、見開きいっぱいに最後尾の車両が描かれている。電車のまわりには、慌ただしく乗車の準備をする人々がいる。ここからページを開くたびに視点が前の車両に移動していき、それとともに時間が進むという構成だ。道中、車外の風景はほとんど分からない。車内で過ごす人々の様子から、時間の流れが見てとれる。

旅慣れたサラリーマン。賑やかな家族連れ。晴れがましい旅なのか、風呂敷包みの荷物を提げた和装の人。ギターを抱えた青年4人組は夜通しカードゲームで遊んでいるし、みんなが寝静まった夜更けに、夜泣きする赤ちゃんをあやす困り顔の女性もいる。

先頭車両が描かれる頃には、車体にはうっすら雪が積もっている。ほっとした顔でホームに降りる乗客たち。コハシと一緒に読むときは、中表紙に描かれた家族を追いかけることが多い。赤ちゃんと、小さな男の子と、お父さんとお母さんの4人組で、男の子はお父さんに手を引かれて電車に乗り込み、お母さんは席に着くとほっとした様子で赤ちゃんを背中から下ろす。一晩たって金沢駅のホームに降り立つと、老夫婦が笑顔で4人を出迎えてくれるのだ。ほうら、男の子がおじいちゃんに抱っこしてもらってるよ、よかったねえよかったねえ。おしまい。改札はもちろん自動改札ではなく、乗客たちは駅員さんに切符を手渡して去っていく。

私は門外漢なので分からないけれど、この絵本の電車の絵は、鉄道マニアがなにかを語りたくなるほど精緻なようだ。さまざまな解説をネット上で見つけることができる。たとえばアマゾンのレビューはこんな感じ。

投稿者 富山第2機関区

この絵本のモデルとなった上野発上越線回り金沢行「能登」号が昭和57年の上越新幹線開通で廃止になってからもう四半世紀たつのですね。(略)
午後9時ちょっと前に福井行の「越前」が13番線を出発すると入れ替わりに貨車みたいな荷物車のスニ41を先頭に後進(推進)運転で行き止まりのホームへ到着します。
スニ41に次に連結されているのが絵本だとB寝台のオハネフ12ですが、実物はA寝台のオロネ10、表紙で先頭のEF58の次に並んでいるのがオハネフ12ですが実物はスハフ42、絵本では終点の金沢までEF58が牽引していることになっていますが、実際は長岡でEF81に交代して終点の金沢まで走るなど若干実際とは異なっています。

 

電車だけでなく、人々や背景も一つ一つがていねいに描かれていて、見ていて飽きない。服装や看板などから70年代当時の雰囲気を味わうことができる。一番時代を感じたのが、金沢駅のホームの水道で歯を磨いている女性の姿だ。これは、今は、見られないよなあ。 

やこうれっしゃ (こどものとも傑作集)

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