まず米、そして野菜

最初は離乳食の記録、途中からは読書の記録。

手段の目的化。「いそがしいよる」さとうわきこ著

星がきれいな夜、ばばばあちゃんは家の中にいるのがもったいなくて、ゆりいすを外に持ちだしてお星様をみていました。やがて遠くの森からお月さんも出てくるのを見ると、いっそのこと外で寝てしまおうと考えました。そこでベッドと毛布と枕を、それからお茶…

それでも書くとは限らない。「絵本ダイアリー」グランまま社

以前、私はこのようなことを書きました。 まだコハシが産まれたてで、炊飯器みたいな音を立てていたとき、母が「あなたが好きそうなものを見つけたわよ」と、読書記録を付けるノートをくれた。「この子に本を読み聞かせるようになったら書いてみたら?」とい…

君が離れていくまでは。「シロナガスクジラ」加藤 秀弘 著、大片 忠明 絵/「もしもしおかあさん」久保 喬 著、いもと ようこ 絵

その日、コハシは不安定だった。ちょっとしたことで怒っては泣き、悲しんでは泣く。疲れていたのかもしれないし、何かのできごとがあったのかもしれない。家に帰ってきてから、しばらく一緒に遊んで、最近楽しみにしている妖怪ウォッチ シャドウサイドのアニ…

ミクロネシアの薫風。「ぶたぶたくんのおかいもの」土方久功 著

まず、表紙を見てほしいわけです。だだ漏れる味わいを見てほしい。リアルな顔とデフォルメされた胴体がアンバランスな豚を、大胆なんだか弱々しいんだか分からないヘロヘロの題字を見てほしい。買い物かごの中のほがらかな人面の物体(パンです。「かおつき…

怖いオオカミと、図鑑のティラノサウルスについて。 「おまえうまそうだな」「きみはほんとうにステキだね」宮西達也 著

前回の恐竜図鑑の続き。 コハシは、図鑑を読んだり動画を見たりしているうちに、肉食恐竜と草食恐竜を見分けられるようになった。見分けが付くと楽しいよね。恐竜図鑑を見ていても「これは肉食、これは草食」と口に出して、「合ってる?」と大人に確かめては…

恐竜図鑑つれづれ。「講談社の動く図鑑 MOVE 恐竜」・「学研の図鑑 LIVE 恐竜」

私の実家はお年玉に図書カードを用意する。現金よりも、ピーターラビットのカードのほうがかわいいからだ。コハシも毎年図書カードをもらっている。今までは使わずにとっておいたけれど、今年、初めて使うことにした。数年分のお年玉を全部まとめて財布に突…

もっと振り回されたかった。「アル どこにいるの?」バイロン・バートン 著

ポップな絵柄とカラフルな色彩の絵本。犬の「アル」が迷子になってから、飼い主の男の子に再会するまでの顛末が、言葉少なく描かれています。童話館ぶっくくらぶでは1〜2歳向けに配本されているとか。明るく、楽しい絵本です。 だから今からここに書くことは…

鬼六の大工が、ヴィンランド・サガのクヌートの敵方だった、というお話。「だいくとおにろく」松居 直 再話、赤羽 末吉 絵

記事がだらだらと長くなってしまったので先に結論を書いておくと、民話『大工と鬼六』の元ネタの主人公は聖王オーラヴ2世で、クヌート大王(『ヴィンランド・サガ』のクヌート)率いる侵略軍に王座を奪われたノルウェー王だった、という話です。ヴィンランド…

写真のコアラはコアラっぽくない。「どうぶつえん  ポプラ社のどうぶつずかん (4)」大高成元 写真

この本は、数年前、タカハシの実家への帰省中に、近所の古本屋さんに行って買ってきたものだ。 タカハシ家には絵本がない。そりゃそうだ、大人ばかりの家に絵本があるほうが稀だ。そのことを、すっかり忘れて、持っていくのを忘れてしまった。それで買いに行…

1000000000000匹の猫のバトルロワイヤル。「100まんびきのねこ」ワンダ・ガアグ 著、石井桃子 訳

前回の更新からずいぶん間が空きました。それというのもコハシの保育園が絵本の貸出を始め、急に読む絵本の種類が増えたからです。読んでいる。凄い勢いで読んでいる。そして記録がちーとも追いつかない。しかたない。しかたないんだ。 最近のコハシは物語を…

ブルータスよお前もか。「おばけなんてないさ」「ねないこだれだ」瀬名恵子 著

コハシは今のところ、おばけのことは怖くない。コハシが怖がっているのは、一に鬼、二に暗闇だ。鬼は、節分のせいですっかり恐ろしいものになった。豆で退散させられると分かっていても怖いものは怖い。暗闇が怖くなったのは割と最近のことで、暗い部屋や、…

負けない。「しょうぼうじどうしゃじぷた」渡辺茂男 著、山本忠敬 絵

前回の記事 《私が気付きたかったのに。「しゅっぱつ しんこう!」山本忠敬 著》 の続き。 絵本「しゅっぱつ しんこう!」にじぷたTシャツが隠れているのを見つけたタカハシは、それはもう勝ち誇った。「じぷた、ね。人気ですよね。ほかの絵本にも出てくるく…

私が気付きたかったのに。「しゅっぱつ しんこう!」山本忠敬 著

一つ前の記事で取り上げた「でんしゃにのったよ」は、この「しゅっぱつしんこう!」のオマージュではないかと勝手に想像している。どちらも出版社は福音館書店。前の「でんしゃにのったよ」の発表は2009年で、内容は「ぼく」とお母さんが山あいの町から電車…

初めて自分で探し出した本。「でんしゃにのったよ」岡本雄司著

図書館の絵本コーナーにコハシを連れて行ったとき、私も初めて図書館に来たような気分になった。この町に住み始めてからいままで、子供向けコーナーには来たことがなかったからだ。絵本の並びは独特だ。普通なら著者名で五十音順に並んでいるところが、タイ…

島田さん。「3月のライオン」12巻までの感想

12巻目は、物語の本筋からしばらく離れていた島田開八段が少し顔を見せたところで終わっている。ここで島田さんが出てくるのか、たまらんな、と思った。 私は島田さんが気になって仕方がない。島田さんは、宗谷さんや土橋さんのように将棋がないと生きていけ…

赤子にばかりかまけてはいけない。「とびだす! うごく! のりもの」 わらべきみか 著

これも神保町ブックフェスティバルで母が買ってきたしかけ絵本だ。手のひらサイズの小ささながら、しかけに関しては、前述の「ごあいさつ」、「じどうしゃがいっぱい」と比べると本格的で、題の通りに本当に「とびだす」し、「うごく」。はしご車のページを…

再挑戦とダイ・ハード。(「アナと雪の女王」2回目)【追記あり】

喜ぶかと思ったんだけど。 「アナと雪の女王」(映画 2013年) - まず米、そして野菜 の続き。ネタバレあり。 薬局で買い物をしていたら、コハシが歯ブラシ売り場の前でしゃがみ込んで動かない。「アナと雪の女王」がプリントされた歯ブラシが買いたいのだと…

監督不行届。「じどうしゃがいっぱい」シンディ・チャン著、リンダ・ハワード絵

母が神保町ブックフェスティバルで買ってきた本のうち、1年くらい寝かせていたものの一つ。表紙に「おりたたみしかけえほん」 とある通り、本文は蛇腹状に折りたたまれている。本の横幅は17㎝くらい。1ページに1台の車が描かれていて、それが10台繋がってい…

早すぎたんだ。「ごあいさつ」和田琴美 著、結城嘉徳 絵

私の絵本好きは母譲りだ。母は、嫁入り道具と一緒に「詩とメルヘン」のバックナンバーを嫁ぎ先へ持ち込んだような人だ。子供の私もご覧の通りの絵本好きに仕上がり、進学しようが就職しようが普通に絵本を読んで暮らした。とはいえ絵本は高価だし場所も取る…

絵本ビンゴつくったよ

「めけぽんビンゴ」というwebサービスを使って、「読んだことある絵本ビンゴ」をつくってみました。定番・1作者1作品・私は読んだ本、という縛りを課しても、25冊は少なかった。あれもこれも入れられなかった……! ぜひリンク先で挑戦して、結果をツイートな…

溜めの極意。「いないいないばあ」松谷みよ子 著、瀬川康男 絵

ロングセラーの「生まれて初めて読むのに最適な絵本」だ。初版はなんと1967年。でも、私は小さい頃に読んだ記憶がない。絶対読んでもらったはずなのにな。 初版からこんなに渋い色合いだったのだろうか。熊も猫も狐も、雑貨屋の棚の奥にあるアンティークのぬ…

動物園で読んだ動物の絵本。「くまさん くまさん なに みてるの?」ビル・マーチン著、エリック・カール絵

私たちが円山動物園で遊んだ日、札幌はすっきりしない天気で、じめじめしていた。円山動物園は、雪深い冬に備えてか屋内展示場がとても充実していて、建物の中から楽しめる展示が多い。雨から逃れて入ったレッサーパンダの屋内施設は、高山の環境を再現する…

スッパダカマンの快哉。「おふろでちゃぷちゃぷ」松谷みよ子 著、いわさきちひろ 絵

我が家には、真っ裸な人を表現する言葉がいくつか存在する。スッパダカマン。オシリーマン。ハダカンボウズ。 余談だが、その他のバリエーションとして、オムツマンや、パンツマン、オシリマルダシマン(上半身だけは服を着て、下は裸のまま逃走する人のこと…

コール&レスポンス一人相撲。「がたんごとんがたんごとん」安西水丸 著

安西水丸さんの絵の、きっぱりした色と形が気持ちいい。話運びも言葉の数も、絵と同じようにすっきり削ぎ落とされている。車両の絶妙な歪み。地面の緑と背景の白の鮮やかな対比。 黒一色の機関車が「がたんごとんがたんごとん」と進んでは、行く先々で「のせ…

足取りのたどたどしさ。「こりゃまてまて」 中脇初枝 著、酒井駒子 絵

読み終わるとすぐ「もっかい読んで!」とリクエストされる絵本だ。つい昨日も続けて3回読まされた。酒井駒子さんの描く少し掠れた線がたまらない。ふよふよした髪の毛。何かに夢中になったときの少しとがった口元。体の割に大きい、アンバランスなあたま。説…

グラフィカル貨物の疾走。「はしれ! かもつたちのぎょうれつ」ドナルド・クリューズ著

JR武蔵野線で電車を待っているとき、目の前を貨物列車が通り過ぎた。見慣れた通勤電車とは明らかに違う、埃っぽい鈍色。延々と連なる車両。金属音を響かせて、たっぷり時間をかけて通り過ぎる威容に、コハシはノックダウンされた。「今のは貨物列車っていう…

「ムジカ・ピッコリーノ 第4期」(NHK 2016年4月~8月放送)

8/19に最終回の20話目が放送された。ああ、終わっちゃった。いつかまた、メロトロン号の人々と、できればピッコリーノ号の面々にも、新しいエピソードで会いたいな。ゴンドリーさんがユーフォニウムのモンストロに出会えなかったのは、5期への布石だと思いた…

タイポグラフィと、文字を持たない読者。 「るるるるる」五味太郎 著

この本に出てくる文字は、「る」と「ぐ」と「れ」の3種類だけだ。五味太郎さんの味のある書き文字ではなく、すっきりとしたフォント(ゴシック体?)が使われている。プロペラ機の後ろに伸びる「る る る る る」の文字列は、エンジン音を表しているのだろう…

子供から鉄道マニアまで。 「やこうれっしゃ」西村繁男 著

コハシが触れた初めての字のない絵本だ。字がないからといって易しい内容ではない。福音館の絵本は裏表紙に対象年齢が書いてあるが、この本は「読んであげるなら4歳から、自分で読むなら小学低学年から」と、なかなかの難易度だ。 文があれば、物語は一つの…

この本は私が独り占めする。 「Eric Carle's ABC 」エリック・カール 著

ふらっと立ち寄ったお店で売っていて一目惚れした。一辺の長さが20cmもない、小ぶりな絵本だ。表紙は厚みがあって、なんだかぷくぷくしている。作者は「はらぺこあおむし」でおなじみの、俺たちの! エリック・カール。「A」は「ants」、「B」は「bird」、「…